業務効率化は生産性向上の一手段?具体的な施策や注意点

少子高齢化や国際競争の激化が進む中、様々な業界でワークスタイルが見直されています。

ビジネスについて語られるときには、必ず「業務効率化」や「生産性向上」といった言葉を目にします。しかし、両者の違いや関係性が明確に分からない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、業務効率化と生産性向上の概要を踏まえ、具体的な実現方法や注意点などを解説します。

より良い職場環境作りや業務パフォーマンス改善を目指している方は、ぜひ参考にしてください。

業務効率化と生産性向上の違いとは

業務効率化と生産性向上は、働き方改革において必要である点で似ているものの、厳密には異なる意味を持ちます。

業務効率化が仕事の無駄やムラを削減することである一方、生産性向上は必要資源を減らすこと、または生産物を多く生み出すことです。

仕事の無駄やムラが減ることは必要資源の削減にもなり、生産物の増加にも繋がります。

つまり、業務効率化は生産性向上を実現するための一つの手段と言えます。

現代では、少子高齢化が加速し、労働力人口の減少が深刻な問題です。

また、デジタル技術の進化や顧客ニーズの多様化が顕著な環境において、限られた人材で市場を勝ち残るための国際競争力が求められます。

業務効率化をはじめとし、あらゆる手段で生産性を向上させることは、現代ビジネスにおける最大の課題と言えます。

生産性向上とは

生産性とは投入資源(インプット)から得られる生産物(アウトプット)の割合のことです。つまり「生産性が高い」とは、何かを生産するために投入した資源が少ないこと、もしくは投入した資源で得られた生産物が多いことを指します。

例えば、新製品を開発する際に、既存のノウハウを活かしてコストや人材などの投入資源を削減できれば、生産性が高い状態と言えます。

生産性は投入資源や指標により、以下の4種類に分けられます。

資本生産性

投資した資本や保有している設備・機械・土地などから生み出された成果を、定量的に数値化したものです。生産量や付加価値額を投下した総資産で割って計算します。

設備の稼働効率を高めたり、原材料費を削減したり、高付加価値商品を生み出したりすることで、資本生産性が向上します。

物的労働生産性

生産物の大きさや重量・数量を基準として、どれだけ効率的に労働が行われるかを数値化したものです。労働者一人当たりの物的労働生産性は、生産量を労働量(労働者数)で割って求められます。

生産量を増やすこと、もしくは労働量を減らすことで、物的労働生産性が高まります。

商品やサービスを対象とした考え方であるため、品質管理や設備投資に関する判断に有効的です。

付加価値労働生産性

財政上生み出された金額ベースの価値、いわゆる付加価値額を基準として、労働の効率性を数値化したものです。付加価値額は、企業総生産額から原材料費・外注費・機械の減価償却費などを差し引いて求められます。また、労働者一人当たりの付加価値労働生産性は、付加価値額を労働量(労働者数)で割ったものです。

外注費用や人件費の削減、付加価値を高めることで、付加価値労働生産性が高まります。

労働者一人当たりが生み出す利益が明確になり、付加価値の再分配を検討する際の参考にもなります。

全要素生産性

労働量や資本・技術進歩やブランド価値など、あらゆる資源要素から測る生産性です。

生産量や付加価値額といった総生産物を総投入量で割って計算されます。

実際、全ての要素を数値化して計算できないため、全体の生産量の変化から労働や資本量の変化を差し引き、生産性の伸び率で表します。

経営戦略・ブランド戦略・技術革新・知的資産や無形資産の有効活用・労働能力の向上などで質的な成長要因を評価するため、経済成長や労働生産性向の指標として注目されています。

業務効率化とは

業務の効率化とは、日々の業務における無駄や無理・ムラを減らし、パフォーマンスの質を改善し合理化するための取り組みです。

予算・人材・資源の余剰や、過密なスケジュールによる負担、時期による仕事量の増減や商品・サービスの質のバラつきなどを削減します。

業務効率化を追求することで、より少ない投入資源(インプット)で、より多くの生産物(アウトプット)を生み出せます。つまり、業務効率化は生産性向上のための一つの手段です。

「生産性向上」のメリット

現代社会において生産性向上が求められる理由とともに、生産性向上を実現するメリットを見ていきましょう。

業務効率化によるコスト削減

生産性を向上させるにあたり、投入資源の量を見直すことになります。

原材料の仕入れ先や方法を変えたり、作業の簡素化・単純化で人材を少数化したり、テレワークを導入したりなど、様々な工夫を通して事務所の賃料や人件費・光熱費などのコストを削減できます。

減らせた分のコストは新商品開発や設備導入、福利厚生などに回して、顧客満足度の向上や労働環境の改善にも活用できます。

従業員の会社への満足度向上

生産性が向上すれば、業務フローにおける無駄がなくなり、従業員の身体的・精神的負担が軽減されます。残業時間が減れば、休暇を取ったり仕事の幅を広げたりして、余裕を持って働きやすくなります。

従業員のワークライフバランスが整うにつれ、会社への満足度も上がるでしょう。

また、生産性向上によって削減されたコストを、福利厚生やスキルアップのための資金に回すことで、従業員一人一人の業務に対するモチベーションも上がります。

顧客からの満足度向上

生産性が向上することで、顧客の満足度向上にも貢献できます。

例えば、設備の導入により業務の一部が自動化されることで、ヒューマンエラーが減少し、商品やサービスの質が上がるでしょう。

また、無駄のない業務フローで余裕が生まれ、従業員のスキルが上がれば、顧客への質も上がるでしょう。

人材が適切に配置され、削減した分のコストを新商品開発に費やすことで、顧客のニーズに応えやすくなります。

労働人口減少への対策となる

少子高齢化が進む現代では、労働力人口(15〜64歳)の割合も減少しています。

企業は限られた人材の中でも業務を維持させ、企業を成長させるための取り組みが必要です。

設備投資や人材教育により、一人当たりの生産性が向上すれば、少数精鋭で長く生き残っていける強い企業になれるでしょう。

グローバル市場での競争に勝てる

日本の生産性は先進諸国と比較して低い傾向があります。

公益財団法人日本生産性本部によれば、2020年の日本の一人当たり労働生産性(就業者一人当たり付加価値)は、78,655ドル(809万円)とOECD加盟38カ国中28位でした。

前年に比べ実質ベースで3.9%落ち込んでおり、1970年以降最も低い水準です。

生産性が低い背景として、長時間労働に起因する疲労によるミスや事故の発生、人件費や光熱費の発生が挙げられます。また、業務量が多くマルチタスクが常態化すると、心身のストレスが生じ、離職や退職のリスク・パフォーマンスの質の低下などに繋がってしまいます。

日本がグローバル市場で戦っていくためには、国際競争力を強化する必要があります。

生産性を向上することで、世界各国から集まる商品・サービスに引けを取らず生き残っていけるでしょう。

業務効率化を行い生産性向上を実現する具体的な方法

生産性を向上させるための手段は様々です。

中でも業務効率化を通して実現する具体的な方法を見ていきましょう。

自社の全体像を把握し課題を明確にする

業務効率化を進める上では、まずは自社の現在の状況を把握していなければなりません。

会社の全体像を把握し、課題を明確にしましょう。

業務を見える化させるためには、業務のマニュアルやフローチャート、従業員の労働時間やスキルマップ、目標管理表や達成表、原価管理表など、複数の情報源を用意します。

業務を洗い出し、全体のフローを俯瞰して課題を明らかにしましょう。

業務を取捨選択し無駄を無くす

洗い出した業務を分析し、取捨選択します。

例えば、今後さらに注力したいもの・現状維持するもの・将来的に撤退したいものなど、業務ごとに区分します。

注力したい業務はコストよりも生産物の増加率が上がるように、将来的に撤退したい業務はコストを削減できるように、無駄を削減していきましょう。

例えば、業務内容をマニュアル化して共有すれば、誰もが質を落とさずに同じパフォーマンスができるようになり、ミスの修正やカバーにかかる手間と時間を削減可能です。

また、書類のフォーマットが統一されれば、作成や確認作業の無駄を省けます。

効率が悪い業務のアウトソーシングを検討する

効率が悪い業務に関しては、アウトソーシングを検討するのも効果的です。

データ入力やカスタマーサポート、経理・給与計算などの業務を、社外の専門会社に依頼したり、ツール導入によって自動化・機械化したりするケースがあります。

アウトソーシングを上手く取り入れることで、コストもミスも削減し業務の質が上がったり、自社の従業員がより需要のある業務に専念したりできるでしょう。

人材を適材適所に再配置する

人はそれぞれ得意分野や苦手分野が異なります。

強みを活かせる業務で才能を伸ばしたり、反対に苦手分野で弱みを克服したりすることで、一社員のキャリアアップや会社の成長に繋がります。

不適切な人材配置を行うと、社員にストレスがかかったり、業務効率が低下したりするかもしれません。

人材を適材適所に配置するためには、社員一人一人の特性を知ることが重要です。

業務上必要な知識や技術・資格などのスキル、個人の性格やポテンシャルを把握しなければなりません。また、会社側の都合だけでなく、社員のキャリア志向や将来の展望・やりがいなども考慮するためには、面談やヒアリングも欠かせません。

ツールの導入を検討する

手動での作業はミスやエラー、時間的なロスがどうしても起きてしまい、業務効率化には限界があります。近年のデジタル技術の進化を利用し、必要な部分にはツールを導入することも検討すべきです。

業務効率化のためのツールには、コミュニケーションツールや名刺管理ツール、日程調整ツールなど、様々な種類があります。自社の課題を把握した上で、最も有効的なツールを取り入れるべきでしょう。

業務効率化を実現するために、どのようなツールが必要なのかお悩みの方は、以下の記事もご参考にしてください。

業務効率化による生産性向上の施策で気をつけるべきこと

最後に、業務効率化を通して生産性向上を図る際に、気をつけるべき点を見ていきましょう。

いきなり具体的なところから始めない

業務効率化のためのアウトソーシングやツールの導入には当然コストがかかります。

自社の状況をしっかりと把握しないまま具体的な施策に手をつけると、根本的な問題が解決されず、コストや時間が無駄になってしまうかもしれません。

まずは、課題の全体像を把握し、各施策の費用対効果を見極めることが大切です。

トップダウンで進め過ぎない

会社の改革を行う際に、決定権を持つのは上位層です。

しかし、上位層がデータだけを見て判断すると、現場が抱える状況とズレが起き、生産性の改善どころか悪化を招く恐れもあります。

生産性向上の施策を行う上では、現場の声を聞くことも忘れてはいけません。

自社をよく知り、必要なツールを駆使しましょう

今回は生産性向上と業務効率化のそれぞれの意味を抑え、実現するメリットや具体的な方法を解説しました。

経済情勢の変化や新技術の開発、顧客ニーズの多様化など、市場を取り巻く環境が目まぐるしく変わる現代社会では、業務効率化による生産性向上が欠かせません。

自社の状況を正確に分析し、必要なツールを駆使して、業務を改善していきましょう。

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